第1回育成者権侵害対策研究会議事概要
 
平成14年9月26日(木)14:00〜16:00
農林水産省生産局第1会議室
 
1 農林水産省挨拶
 
2 座長指名 
  事務局提案により、渋谷委員を座長とすることについて各委員了解。
 
3 座長挨拶及び公開の可否についての確認
(座長)
  ご指名なのでお引き受けする。知り合いに専業農家がおり、情勢が厳しくなっていると聞いている。育成者権の侵害についてもそういった情勢の一環として重要な問題と考えている。我々にとってもこのような会議はありがたいことだと考えている。
座長代理を畑中委員にお願いしたい(了承)。
  事務局より、本会議の公開の可否について決定していただきたいとのことだが、ご意見等を承りたい。
 
(委員)
  プレスに入っていただくのはかまわない。関心を持っていただくことが大事。
 
(委員)
  公開はかまわないが、ずっと映像を取られていると、議論が不活発になるおそれがある。カメラは頭取りのみとし、傍聴については最後まで可とすればよいのではないか。
 
(座長)
  公開については可、カメラ撮りは冒頭だけ可ということでよいか(委員了承)。
 
(事務局)
  それでは、傍聴は会議中可能とするが、カメラについては頭撮りのみ可ということにさせていただきたい。
 
4 資料説明
(事務局)
 
5 意見交換
(委員)
  本研究会で議論する項目は、資料に示された諸課題の全てなのか、それとも罰則強化と水際規制のみとするのか。
 
(事務局)
  せっかくの機会なので、制度関係以外についても広く議論していただきたい。ただし、制度関係については、改正等を実行していかなければならないので、ある程度集中して議論していただきたい。
 
(委員)
  アンケート結果を見ると、国内においてもかなり育成者権侵害は起きている。今の我が国での育成者権の保護の実体は、世界的に見た場合はどのような状況か。
 
(事務局)
  海外が我が国の保護の実体をどのようにみているかということが答えの一つになると思う。我が国の品種登録の出願のうち3割は海外からの出願。海外からの出願が増えているということはある程度我が国の制度は評価されていると考えられるのではないか。
 
(委員)
  権利侵害への対策という点について、我が国は世界的にみてどうなのか。
 
(事務局)
  アンケートの結果にもあるように、侵害の立証方法が難しいという実態がある。立証にDNA鑑定の導入が可能となれば迅速になる。海外でも裁判例は少なく、和解中心のため、実態がつかみにくい。
 
(委員)
  育成者権を取得する目的はもちろん権利の行使であるが、積極的な権利行使までは考えず自社の宣伝になるからと考えて品種登録する人が多いのではないか。特許はシビアである。そもそも権利を行使しようという意識がないことが他人の権利を尊重せず侵害することに抵抗を感じないことにつながるのではないか。
 
(事務局)
  アンケート結果を見ても、権利侵害について、例えば隣の農家には言いにくいといったものがある。そのあたりは特許のように企業と企業が結びつくという状況とは少々異なる。
 
(座長)
  話を先に進めさせていただく。鹿野委員、山手委員より育成者権行使の現状等について話題を提供してもらう。
 
(委員)
  当社はバラをメインに商売している。栄養繁殖の植物は育成者権を犯されやすい。当社もこれまでは国内における育成者権保護について取り組んできたが、現在、海外からの収穫物に対する対策を進めている。国内生産者のバラの権利に対する意識はこの25年で先進国並みになった。権利問題がなぜ裁判にならないかというと、バラの場合、一生産者が大量に栽培しているので、(裁判となった場合の損害などを考慮して)向こうから謝ってきて和解となる。我々は過去3年くらいの各農家の栽培品種のデータ等をもって巡回しており、侵害を発見した場合にはその場で和解文に捺印させている。そのように以前に比べ国内はラクになった。法律があったから良いというものではなく、取り締まり、教育が必要である。育成者権については、個人では名誉的に取得する人もあるかもしれないが、我々のように種苗を商売にしている大多数の者には名誉として育成者権を取得するような者はいない。
  この10年はインド、韓国、中国との問題が中心。韓国は法律ができても当然取り締まる人がいないとダメなので代理店を置いている。しかし審査期間が3年も4年もかかるとその間に新たな品種に変わってしまう。日本の生産者は使用料を払って作ってもらっているのに、向こうは自由に作っており、この点で公平でなく、対等な競争になっていない、許せないと言っている。だんだん分かってきてはもらっているようだが。
 
(委員)
  弊社はキク専門に扱っている。歴史的経緯は分からないが、キクについては法律の浸透はバラよりも劣っていると考える。NHKの「趣味の園芸」でも、キクの苗は増殖に失敗したら友人から分けてもらえなどといっている。もっともそれは趣味の世界だろうが。
  営利栽培の世界では、現在の我が国の60億本の花き市場のうちキクが22億本のシェアを占めている。弊社は国内市場の他、提携先を通じオランダの市場において「レーガン」というスプレー菊が市場占有率約5割を占めている。
  キクには輪菊、小菊、スプレー菊とあるが、スプレー菊はほとんどパテント(品種登録)が取られている。輪菊も皆新しい品種に更新されたことから、パテント品種は弊社の全品種の7割ほどになり、モグリの者(侵害者)に対する周囲の目は厳しくなっている。
  キクそのものは自家増殖が認められている。実態的に言っても22億本の出荷量に対し、苗供給が可能なのは3%でしかない。そこで、自家増殖をして切り花生産をしてもらい、花一輪(1本)に対していくらというロイヤリティーを頂いている。これは民事契約を交わしている。こういった実態からして、法的に収穫物に対する罰則を加えるということは実態を法的に補強することにもなり歓迎すべきことだ。
  アジア諸国、中国では政府からの補助金も受け外貨獲得のために花き生産をしている。ターゲットは日本で、キク、バラ、カーネーションの生産を思いっきりやっている。やはり向こうでは権利に対する意識は低い。日本に収穫物が輸入されるという恐怖は種苗業者も生産者も抱いている。水際規制について公平感をもってルールづくりをしていただきたい。
  最後に一点。品種の同一性の判断が難しい。弊社は昨年だけで200品種登録したが、ぱっとみて識別は難しい。それに加え、侵害対策となると、生産者が1万人いるのに対し弊社の営業は10人しかいないというマンパワーの問題もある。
 
(座長)
  お二人に共通するのは海外からの輸入問題と考える。
 
(委員)
  韓国の法律は罰則なども厳しい。しかし生産の実態はほとんど違法行為ばかりだと思う。代理店もどの品種をターゲットにして取り締まろうかと思うほど。それから、韓国から中国に流出している。それで中国から我が国へ収穫物が入ってくるというものもある。ベトナムへも流出しているようだ。我が国の生産者がアメリカの花き生産者のようにならないで欲しいと願っている。アメリカではカーネーション、バラともラテンアメリカに生産をもっていかれた。
 
(委員)
  アメリカの花き生産は確かにラテンアメリカに生産が移ったことにより壊滅した。今のお二人の話を聞いていると種苗法は結構守られているものと思ったが、それ以外の部分もある。種苗法を作った時もどう守ってもらうかということが問題だった。制度改正、国境措置はもちろん良いことだが、むしろ商社などへのPRを行っていかないと、実態として商社など制度がよく分かっていない部分がある。どう守っていくかということを考える必要があるし、それを本研究会の報告書にも入れて外部にもアピールしていく必要がある。しかしながら、日本の産地についてみれば、生産者個々の規模が大きくなってきたからチェックは以前よりラクになってきたのではないか。
 
(委員)
  イタリアは日本と同様山がちで生産者の数も日本より多い。しかし、シチリア島では、業者が集金に行くとマフィアに殺されてしまう場合があると聞いた。
  やはり権利意識を浸透させ、守っていくためには権利者の努力の積み重ねが基本。ただし、海外からの不正流入は民間だけでは対抗しきれない。「アジアはアジア」なんて言っても国をあげてコピーを作っているのだからどうしようもない。それから韓国なども転作が行われ花きが増加している。その上日本の構造改善事業みたいな補助金が出ているのではないのか。
 
(委員)
  新聞に種苗法改正の記事が載ったときには、輸入業者から問い合わせがあった。我が国では生産者が高齢で理解してもらうのに時間がかかるが、水際規制となれば相手は商社など社会的責任も大きい者が中心で、対応はしやすいと思う。
 
(委員)
  私たち種苗業者は生産者と共存共栄で、生産者が衰退すれば我々もということになる。しかし、卸売業者となるとダミー会社まで作って国内のことなど考えずに輸入している。
 
(委員)
  市場等への立ち入り調査権はないのか。
 
(事務局)
  種苗法は規制法ではないので調査権はない。
 
(座長)
  輸入業者は零細なところもあるのではないか。
 
(委員)
  大手は市場を通すなどしっかりしている。零細なところも葬儀社なので流通ルートは比較的分かりやすい。精興の誠という弊社の品種で中国から輸入されているケースがあったが、これは「その筋」の人でこちらもモノがいえなかった。しかしそれ以外は比較的困難は少ない。
 
(座長)
  それら以外のケースでも、イチゴなど韓国から荷物を人が背負ってくるなどという例があるのではないか。
  やはり相手が零細で数が多いと、刑事罰を作って抑止するというのは当然。相手が大手ばかりならばよいのだが。
 
(委員)
  特許でも告訴にまで至らない例は多い。もっとも、最近罰則が強化されたが、従来は特許の罰則はそれほど大きな抑止力を持たなかったように思うが。
 
(座長)
  特許では法人は1.5億円、個人は500万円となっている。
 
(事務局)
  当方で流通業者向けにパンフレットを作り配布したが、これに罰則も適用される場合がある旨を載せたところ、早速侵害交渉の場面で効果があったという事例もある。
 
(委員)
  やはり立ち入りなど一罰百戒的な事をしなければいけないのではないか。伝家の宝刀を抜かないと皆が認識してくれない。
 
(委員)
  花の場合、3日もすれば商品価値は大きく下がってしまう。そういう事情があり、輸入業者は足止めを食らって権利行使されることを恐れている。通常1本55円のキクでマージンは5円ほど。
  輸入業者がロイヤリティーについて1本あたりいくらで・・・なんて計算するのは大変なことと思う。いずれ権利者に対して申告してもらうことになれば、権利者から許可証を発行させそれで通関するといったようなドキュメントレーションの改善が必要なのではないか。
 
(委員)
  商標で自社の商品を守ろうともしたが、韓国など品種名を変えて出してしまうということもある。やはりモノ自体を押さえなければいけない。それから、いろいろ制度を作ってもなかなか証人になりたくないなんていう話が多くなりがち。その辺も含めうまく作っていただきたい。
 
(座長)
  一応時間となったので本日はこれにて終了させていただきたい。
 
(事務局)
  次回日程について各委員の都合等を聴取。
 
6 閉会
 
 
                                     (以上)